超高速コンピュータ網形成プロジェクト
〜National Research Grid Initiative(NAREGI)〜

ナノサイエンス実証研究


■ナノ分子集合体■


●グループリーダー●

岡崎 進(自然科学研究機構・計算科学研究センター・教授)
E-mail:okazaki@ims.ac.jp
〒444-8585 愛知県岡崎市明大寺町字西郷中38


●研究目的●
5年間を通しての研究目的

 分子は分子集合体として、また単一分子のコンホメーションとして、 溶液、表面、細孔、そして真空など与えられた一定の環境下において 温度、圧力、濃度の関数としてある法則に従って自発的に多様な構造を形成する。 水溶液中におけるミセルや膜の生成、またタンパク質の折れたたみなどは これらの典型的な例である。 このようにして生成したナノスケールの分子構造体は オングストロームレベルやバルクでは見られないふるまいを示し、 化学的、生理学的、そして電気、磁気的に有用な機能を有し、 新たな工業的応用に大きな期待が寄せられている。 しかしながら、これらの、分子集合体がどのような法則に従って 特定の構造を形成し、自己組織化していくかについては これまでほとんど明らかにされていない。 このため、分子を用いたナノテクノロジーを新たに展開しようとする時、 すべては経験に頼らざるを得ない状況にある。
 本研究においては、上述のような構造形成の原理・法則を 自由エネルギーに立ち戻って明らかにした上で、 ナノスケールの分子集合体や単一分子に対して、 分子の種類とそれがおかれた温度、圧力、濃度などの環境を変数として、 膜融合までを視野に入れた新たな構造予測技術を確立する。 一方で、自己組織化により形成されたこのよな構造に基づいて発現される機能に対し、 分子レベルからの系統的な理解を得て、 ナノ分子集合体が示す機能予測を行うための シュミレーションの方法論も同時に確立する。



●研究内容および研究計画●
5年間を通しての計画

 本研究においては(1)自己組織化分子集合体、(2)ナノ空間分子集合体、 (3)機能発現系の構造と熱ゆらぎを主テーマとして、 低分子から高分子に至るまでの広範囲な分子系が、 溶液中、表面、そして細孔中など特にナノサイエンスにおいて 重要と考えられる環境下で示す自己組織化について シミュレーション研究を行い、 自己組織化の原理・法則を明らかにするとともに、 形成された構造に基づいた機能発現の分子構造を明らかにする。

(1)自己組織化分子集合体

 ミセル、機能性高分子多孔質膜、生体膜、タンパク質、DNAなどの両親媒性分子が 水溶液中で示す安定構造とダイナミックスを明らかにするため、 大規模分子動力学計算や拡張アンサンブル法に基づいたシミュレーション研究を実行し、 同時に平均力やメモリ関数の解析を行い、 新たな方法論開発に対する基礎データを提供する。 そして、ここで得られた知見に基づいて、 溶媒中におけるナノスケールの溶媒質分子の自由エネルギーや平均力に対して RISM理論、エネルギー汎関数展開法などを用いた構造予測法を確立する。 さらには、予測された安定構造のまわりで熱ゆらぎに対して、 メモリ関数や平均力として得られた力の粗視化モデルを LD法に適用する動力学的シミュレーション手法を試みる。 また粒子の粗視化を行い、これらをDPD法に適用する。

(2)ナノ空間分子集合体

 三次元的、二次元的、そして一次元的に制限されたナノスケールの空間中で 液体や溶液、そしてガラスや固体などの分子集団系が示す 特異な振る舞いを明らかにするために 大規模分子動力学計算ならびにRISM理論によるシミュレーション研究を実行する。 研究対象とする制限空間としては ナノ細孔中の液滴やクラスター、 壁にはさまれた分子系や表面に吸着された分子集合体、 そしてナノチューブ中の分子集団に注目し、 これらが示す総挙動の特異なふるまいや構造的特異性、 ダイナミックスの特徴などの基礎物性を明らかにする。 一方でたとえば電解質溶液系が示す これらの制限空間内での特異な電気的特性など、 応用面も含めた様々な新規な現象を明らかにしていく。

(3)機能発現系の構造と熱ゆらぎ

 大規模分子動力学計算やここで開発した手法などに基づいて、 タンパク質の運動やイオンチャンネルの動力学、 また生体膜の運動などの生体関連物質のダイナミックスについて明らかにする。 また、分子エレクトロニクス素子の熱運動と電子状態との カップリング等についても検討を進める。 このとき重要となる溶媒存在下での ナノスケール物質に関連した電子状態やプロトン移動など、 量子化された系に対してもシミュレーション手法を拡張する。




●平成17年度業務計画●

 ナノスケールの分子集合体の構造予測、機能予測のためのシミュレーション手法の確立を はかるとともに、前年度までに作成した両親媒性水溶液や生体膜、タンパク質などの大規模 複雑系に適した分子動力学法、拡張アンサンブル法、RISM理論等の計算プログラムを用い、 開発されたミドルウェアによるグリッド環境上での実証計算を行う。実証計算では、グリッド MPI、RPC、スケジューラ、ワークフロー、PSE等を用い、高度な並列計算や連成計算、効率的 パラメータサベイ、また開発プログラムの即時相互利用等を実施する。

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